普通なら、私だって入らない。
シェアと言ってもプライバシーは守る約束で始めたのだ。
でも、この人に見せてあげたかった。
だから私は案内してしまう。

「…爽ちゃんあんまり片付けてないけど…。」

「ううん。」

彼の表情が陰る。

「アイツらしいよ。」

俺があげた人形俺と撮った写真俺と遊んだ日の服俺と作った服俺と揃いの鞄ああ、アイツもちゃんと俺を好き。

「……ごめんなさい……。」

私は泣く事しかできなくなった。

「どうして謝るの。」

「もう…この部屋見ちゃうと、耐えられなくて…。
信じたくないんです…きっと、あなたも、でしょう…?」


「…うん、

そうだね。」


爽ちゃんはいない。
もういないんだ。

5日も前に、鼓動は止まってるの。

それを信じたくない私は、まるで彼女とシェアを続けているように生きていた。
部屋もそのままにしていたし、靴だってそのまま置いてある。
彼もきっと信じたくなくて、逢いたくて自然と来てしまったんだろう。
そして同じ状態の私たちは、思わず爽ちゃんが生きているかの様な口振りで話をした。

この部屋を見なかったら、もしかしたら私たちはずっとこんな風に話していたのかもしれない。
彼女のいない現実なんて、悲しすぎるんだもの。

「…ごめん。泣かせちゃう様なら、来ない方がよかったよね。」

心配だったんだ。
5日前、彼女のいる病院に駆け付けた時に泣きじゃくる君を見た。
壊れそうな泣き方、そのまま壊れてなくなってしまいそうで、酷く不安になったのだ。

「いえ…。

ありがとう。」