階段を一番下から一番上まで上り切り、重く汚れた扉を開ける。



屋上が好きだ。

わざわざ苦労して合鍵まで手に入れた。

だから僕は、そこで最期を迎えようと決めたのだ。



いつも人気のないこの場所。けれど今日は違っていた。

息切れのする中、僕の眼球が捉えたものは夕闇迫る空と柵の向こう側にいる一人

ポツンと佇む人の姿だった。











 ド

  ア

 の











「何してんですか、んな所で」



僕はその佇む人の事を知っている。

話をした事はないが、同じクラスのあまり目立たない女子だ。

目立たないと言っても特別暗い訳でもなく、出来損ないな訳でもない。

成績や運動神経、性格や外見など可も無く不可も無く普通なのだ。

けれど一応学生らしく彼氏なんかはいるらしく、何度かその男も見た事がある。



「…そっちこそ、なんなの突然。鍵かけたのに…」



僕の手には屋上の鍵と、分かりやすく『遺書』と書いておいた紙が握り締められている。