未知と拓也君はすっかり打ち解けて 何やら仲良く話している。


正木は…ものすごい勢いで食べている。


…完全にやけ食いらしい。



「拓也君…かわいいですね」


僕が話し掛けると 阿部さんは優しい瞳で拓也君を見た後で話し始めた。


「ええ。やっぱり子供は宝物ですから。拓也がいるから私は頑張れるんです」


「阿部さんの御主人は幸せ者ですね。ステキな家族に囲まれて…」


阿部さんの瞳が一瞬揺れたと思うと またすぐに穏やかな笑顔になった。


「本当に…。主人がいればもっと幸せだったかなって思う時はあります。拓也が1歳になってすぐ 病気で亡くなったので。でも…今も幸せですよ。あの人が拓也を私に残してくれましたから」


「そ…う だったんですか…」



僕はその一言を言うだけで精一杯だった。


阿部さんに同情したというわけではない。


僕達と同じ。


だから何も言えなかったのだ。