この世界で君を愛す

僕が正木をあまり心配しないのには訳がある。


それは…。




―ピンポーンー




再びチャイムが鳴り 今度は未知が玄関に迎え出た。


正木はそんな事は気にもとめない様子で 自分の世界に浸っているようだった。


「渉?阿部さんが来てくれたよ!」


未知の後ろから恥ずかしそうに微笑みながら阿部さんが入ってきた。


「こんばんは。図々しく来てしまいました」



僕は悪い予感がした。


正木を見ると…たった今漂わせていた悲壮感はすっかり影を潜め ボーっと阿部さんを見つめている。




そう…。


正木はかなり惚れっぽい人間なのだった。




失恋の傷を癒すには新しい恋…とはよく言ったものだ。


僕はホッとした気持ちと呆れた気持ちが半分半分の複雑な思いで 正木の顔を眺めていた。