この世界で君を愛す

「じゃあ僕はちょっと忙しいから…」


そう言ってキッチンに逃げようとする僕の腕を正木が掴んだ。


「聞いてくれないんですか？何があったのか。上田さんのかわいい後輩がこんなに傷ついているっていうのに」


「…わかったよ。ええと…なんで振られたの？」


聞かなくてもなんとなく予想はついているが　僕は一応聞いてみた。


正木は大袈裟な溜め息と芝居がかった悲壮感に満ちた表情をして話し始めた。


「それが…思ったよりもつまらない人だし一緒にいると疲れるって言われて。しかも…今回は二股でした」


「二股ぁ！？」


「…はい。一ヶ月にも満たないはかない恋でした…」


「…。まあ…いつかお前の事をわかってくれる人が現れるさ」



はっきり言って正木はいい奴だ。

僕が言うのもなんだが…高学歴　高収入で一流企業の研究員だから　女の子の受けは最高だ。

ただ…。

正木はすぐ一生懸命になってしまうため　相手からすれば　その一途さが重くなってしまうのだ。

不器用な奴なんだよな…。