もし…僕と未知が普通に結婚していたら…。


未知はこうやって近所の奥さんと話したりしたのかな…。


未知…ごめんね。



思わず涙が出そうになった僕の耳に 拓也君の声が聞こえてきた。


「ママー。僕もすき焼きが食べたい!今日はカレーじゃなくてすき焼きにしてよー!」


「そんなこと言ったって。うちはカレーって決まってるんだから」


「やだ!すき焼きがいい!」


「拓也!わがまま言うんじゃありません!」


「だって…」


拓也君の大きな目に涙が溜まってきたのを見て 未知がクスクス笑って言った。


「よかったら…うちで一緒に食べませんか?みんなで食べたほうが楽しいし。ね?拓也君」


「そんなわけにはいきませんから…」


恐縮する阿部さんに 僕が声をかけた。


「いや。よかったら本当に来てください。実は今日は未知のお祝いなので…一人でも多くの人に祝ってもらったほうが未知も喜びますから」