阿部さんは申し訳なさそうに未知に頭を下げている。


「本当にすみません。もう この子ったらやんちゃすぎて…ちょっと目を離したすきにこの始末ですから。もう…拓也もお姉さんに謝りなさい!」


拓也君はペコリと頭を下げてこう言った。


「ごめんなさい。おばちゃん!」


「おっおば…!」


目を白黒させている未知を見て思わず吹き出した僕を 未知が睨んだ。


阿部さんは慌てて何度も頭を下げている。

「すみません!すみません!こらー!拓也―!」


未知は笑いながら答えた。

「いいですよ。拓也君から見たらおばちゃんですから。それより…阿部さんはいつもここで買い物してるんですか?」


「ええ。うちはここのすぐ近くなんですよ。未知さんも近くなんですか?」


阿部さんはジタバタ暴れる拓也君を必死で捕まえながら息を切らしていた。


「いえ。今日はたまたまこっちまで来ただけで」


「そうなんですか。あら…もしかして今日はすき焼きですか?」


「はい。ちょっと奮発しちゃいました」