遊園地デートから一週間がたった。

あの日偶然出会った阿部さんは特に何も聞いてこなかったので 私達も特に何の説明もせずに挨拶をして別れた。


阿部さん結婚してたんだ…。

かわいい男の子がいて…。



―コン コンー


ドアをノックする音がして 渉が顔を出した。


「どう?はかどってる?って…あー未知サボってたな?」


「サボってなんかいないよー。今はちょっと…どんな表現がいいか考えてたの!」


「本当に?まぁいいや。はい!差し入れ!」


渉が差し出した袋の中には紙コップが二つ。


「あっ!これって!」


「そうだよ。前に未知がバイトしてた店のコーヒーだよ。ちょっとぬるくなったけど」


プラスチックのふたを開けるとコーヒーの良い香がした。


「うーん!懐かしい!いい香!休憩して一緒に飲もう?」


「今休憩してたんじゃなかったの?」


「渉ってば そんな意地悪言わないでよ」


「サボってた未知が悪いんでしょ」


そう言って 渉は楽しそうに笑った。