インスタントのミートソースをかけるだけだったので パスタはあっという間に出来上がり 渉はそれをペロリと平らげた。


「ごちそうさま。おいしかったよ。久々の未知の味」


渉はニヤリと笑って 隣の部屋からタオルを取ってくるとバスルームに消えた。



それはまるで…。


一年間渉がいなかった事のほうが夢だったんじゃないか…と思えるほどに自然な時間だった。



私は食器を重ねるとシンクに運び 水を流した。

洗剤の小さな泡が空中に浮かぶのを何気なく見ていると ソファーで動く気配がして目線を移した。

「う…うーん…」


「あっ。正木君。大丈夫?」


正木君は子供みたいに目をこすると 回りをキョロキョロと見回した。


「あっあれ?俺どうしたんだろう…」


「覚えてないの?突然部屋に入ってきたかと思ったら急に倒れちゃったんだよ」


「俺が倒れたんですか?」


正木君はいまいちピンとこないようだったが 少したつとハッとした顔で私を見た。