この世界で君を愛す

「歩こう。」


そう渉が言って 私達は桜のトンネルの中に入った。


一歩足を踏み出す度に 別れの時が近付いてくる。


両脇に立つ桜の木が 静かに私達を見守っていた。


その呼吸が聞こえそうなほど トンネルの中は静かだった。


今はどういうわけか車の走る音や人の話し声…いろんな物音が遮断された不思議な空間となっていた。




私達は無言で歩き続ける。


繋いだ手から お互いの想いが流れこむから…。



だから言葉はいらない。