「渉。今年も桜がキレイだよ」



桜の花の下で 私は手を合わせた。

いつもは花束を持ってくるのだが どんな花もこの見事な桜には勝てない気がして 今日は手ぶらで来ていた。



渉がいなくなって一年。

今日は…いわゆる命日にあたる。



一年という月日は意外にもあっという間に過ぎ 私や渉の両親など 大切な人を失った傷は依然癒えてはいなかったが…涙を流す回数が減ったり 友達の話で笑うことができるようにはなった。



だけど…。


人はそう簡単は変われない。


渉を想う気持ちは一年前と変わりなかった。