結婚式をすると決めてから今日まで 打ち合わせをする時間などなかった。


「ドレスについては私に任せてくださいね」と真奈美さんが言ってくれたので 私は自分がどんなドレスを着るのかもわからなかった。



どんなドレスでも…いや…ドレスなんか着なくても…渉と誓い合えれば それだけでいい。


たとえ一日でも 渉の奥さんになれるならそれでいい。


これが『結婚式ごっこ』だとしても。


気持ちは本物なのだから。




真奈美さんが部屋のはじに掛けてあったドレスを持ってきた。


「未知さん。このドレスでお気に召しますか?」


「あっ…!」



そのドレスは…以前渉が選んでくれた物だった。



「真奈美さん…これ…もしかして覚えてくれてたんですか?」


「もちろん。プロですから。」


そう言うと 真奈美さんは片目を閉じた。