この世界で君を愛す

「ふう…ん…。そう…。」


私の話を聞き終えると お姉さんの顔は正木君と同じように曇った。


「未知さんの気持ちがわからないわけじゃないのよ?でも…大賛成ってわけにもいかない。」


「やっぱり…そうですよね。」

私は俯いた。



「ねぇ 未知さん。渉のお葬式の後…私は未知さんに連絡しなかった。それは何故だかわかる?」


首を振る私にお姉さんは優しく言葉を続けた。


「私が連絡すれば 未知さんは嫌でも渉を思い出す。いつまでも悲しい気持ちのままでいてほしくなかった。立ち直って新しい人生を歩いて欲しいと思ったからなのよ?」


「…はい…。」



きっと…お姉さんの言ってる事は正しい。


そして…渉の言ったことも正しい。


だけど私は…。




「お姉さん。これは私のわがままかもしれません。でも…新しい人生と言っても…今まで渉がいたということは消えません。なかったことにはできません。私は…。前を向くためにも渉と愛し合った証が欲しい。たとえ…自己満足だとしても。」