「うぅ 寒い。」


コートも着ずに飛び出してきたから 木枯らしが身にしみた。


「どうしよう…。」


こんな事を相談できる人なんていない。



かろうじてポケットに入っていた携帯電話を取り出すと 私はボタンを押した。

5回程コールが鳴ったところで繋がったようだ。


『もしもし?』


「今仕事中だよね?なんで電話に出るわけ?真面目に働きなさいよ。」


『電話かけてきておいて その言い方はひどいですよ。未知さん。』


電話の向こうで正木君が苦笑した。



「渉とケンカしちゃって…アパートを飛び出してきちゃった。」


『えぇー!?マジっすか!?もうちょっとで仕事終わるんで…どこか近くの店で時間潰しててくださいよ。』


「うん。ごめんね。」



電話を切ると 私は公園の近くにある喫茶店に行くことにした。


財布を持っていないことに気付いたが 正木君が来るから大丈夫だろう。



私はホットカフェオレを頼むと 窓から見える公園を眺めて正木君が来るのを待った。