この世界で君を愛す

みんな父の言葉を聞いて笑ったが 僕には笑うことができなかった。


「父さん…。僕は本当に親不孝者だよ。ごめん。」



すると父は真顔になって また僕に質問をした。


「渉。最大の親孝行とは何か知ってるか?」


「親孝行?」



何だろう…?


今まで育ててもらった恩も返さずに死んでしまった僕に 最大の親孝行ができたとは思えなかった。



僕が答えられずにいると 父はこう言った。


「それはな。渉。お前が生まれてきたことだ。」


「えっ。」


僕は父の顔を見た。


いつの間にか 父の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。


「お前が生まれた時…父さんは自分以上に幸せな人間なんて この世にいないだろうと思った。それくらい幸せだった。だからお前は生まれた時に最高の親孝行をしたんだから…父さんと母さんに悪いと思うことは何もないんだよ。」


「父さん…。」


僕は胸がいっぱいになり 涙がとまらなくなった。


温かい涙がいくつも頬を伝った。