この世界で君を愛す

――ピンポーン−−


ふいに部屋のチャイムが鳴ったが 私は動けずにいた。


――ピンポーン−−

――ピンポーン――


それでも相手は容赦なくチャイムを鳴らす。

仕方なく部屋の壁にあるインターホンの画面を見ると映っていたのは正木君だった。

私は玄関まで行って直接ドアを開けることにした。

何と声を発すればいいかわからなかったからだ。


「…未知さん。突然すみません…」


正木君は俯いたままでそう言うと 黙ってしまた。


「…どうぞ 入って」


「…はい。すみません…」


正木君は靴を脱ぐと 小さな声で「おじゃまします」と言い 部屋に入った。



彼はいつも部屋に入るなり「ちょっと上田さん聞いてくださいよ!」と言い それに対して渉が「なんだよ正木。お前また来たの?今度は何があったわけ?」と呆れ顔で答える。


正木君のくだらない悩みだって なんだかんだ言って渉は聞いてあげてたよね。


そんな二人のやり取りを 私はぼんやりと思い出していた。