この世界で君を愛す

今では 僕の方が父より背が高い。


高校生の時に 父の身長を越えたのだ。


悔しそうにしながらも 実は喜んでくれていたあの日の父の姿を 僕は思い出していた。



父がやっと重い口を開いた。


「渉…。最大の親不幸は何か知っているか?」


「…え…。」


僕が口ごもっていると 突然父のこぶしが飛んできた。



「こ…の…!親不孝者め!!」



父のゴツゴツした右手が僕の左頬にヒットした。


「キャー!!渉!!」

「上田さん!大丈夫ですか!」


姉と正木が僕を抱き起こした。



しかし…。



僕は顔よりも 胸のほうが数倍痛かった。



そう…最大の親不孝とは…。



親よりも先に死ぬこと。



…なのだろうから。