この世界で君を愛す

「でもね お母さん。渉は生き返ったり 死んでなかったわけじゃ…ないのよ?」


おずおずと言う姉に 母はニッコリとした。


「わかってるわ。あの日病院で眠っていたのは確かに渉だった。そして…渉が煙になるのも見送った。今でも思い出すたびに苦しくて…涙が出るの。忘れることなんてできないし 渉の事を忘れるはずがないんだから。」


「母さん…。」


「幽霊でもいいから 渉に会えたらどんなに嬉しいだろうって いつも思ってた。神様に感謝しなきゃね。渉に会わせてくれたんだから。…ねぇ お父さん?」


ずっと身動きをせず座っていた父が 立ち上がるとゆっくり歩いてきた。


「父さん…。」


僕も立ち上がると 父と向きあった。