この世界で君を愛す

家の門の前で 僕達は立ち往生した。


歳をとった両親には この事態を理解するのは難しいかもしれないと思ったからだった。


「渉が生き返ったとか 本当は死んでなかったとか…そんなふうに思われたら大変。」


姉はそう言うと 両親に説明するため先に家に入っていった。



姉はもう泣いていなかったし むしろ僕と正木を仕切っているようでもあった。


正木は姉がドアの向こうに消えるのを見届けると 小さな溜め息をついた。


「上田さんのお姉さんって なんていうか…。」


「仕切り屋だろう?」


「いやっ…そんなことは言ってないですけど。気持ちの切り替えが早い人だなぁって。」


「姉は昔からそういう人だよ。柔軟性があって前向きで…そして僕をからかって遊んでた。」


「でも…上田さんによく似てますね。優しそうな所とか。」


「そうかな。」


「優しいとは言ってませんよ!優しそうって言ったんですからね。」



冷たい風に身を縮めながら 僕達は笑った。