この世界で君を愛す

「でも…。」



姉はかがんで愛ちゃんを抱きしめたまま 僕を見上げた。


「私はね この子が生まれてから思った事があるの。この子を残して死ねないって。でもね…愛が私より先に死ぬのは絶対に耐えられない。きっとおかしくなってしまう。」


「……。」


「お父さんとお母さんも同じ。渉が死んでから…あっという間に老け込んじゃってね。あまり笑わなくなった。だから心配で…こうして愛を連れて時々様子を見にきてるの。」


僕は唇を噛んだ。

「姉さん…ごめん。」


姉は少し微笑んで言った。

「渉が謝ることないでしょう?お母さんが時々言うの。渉は本当に幸せだったかなって。この家に生まれてきて 本当に幸せだと思ってくれてたかなって。」



僕は右手で口を押さえた。


それでも涙は溢れてきた。