この世界で君を愛す

静まり返った部屋。

私は黒いワンピースのままソファーに腰をおろした。

部屋の中を見渡すと いたる所に渉が暮らしていたという証がある。


当たり前だよ…。

だって…だってつい三日前まで 渉はこの部屋にいたんだから。


そして…私を抱きしめて…「愛してる」って言ったんだから。


「ずっと一緒だよ」って言ったんだから…。


渉がいつも着ていたジャケットが目に入り私はそれをそっと撫でた。


頬を当てると渉の匂いがした。

渉がいつもつけていたコロンの香とタバコの香。


私が大好きだった渉の匂い…。


抱きしめられた時に感じていた匂い…それはまだここにあるのに 渉はいないんだ。


渉が残した物はいっぱいあるのに 渉がいない…。

それが事実だと受け入れることは まだまだできるはずもなかった。