この世界で君を愛す

始め小さかった雨粒はだんだんと大きくなり あっという間に土砂降りに変わった。


遠くからは 時折ゴロゴロという低い音が鳴るのが聞こえた。


今まで呑気に花火を見ていた見物客達は皆 我先にと走り出した。


狭い土手の上では逃げ場は無く…僕達も人に押されるようにして走り出すしかなかった。


夜の闇と激しい雨は僕達の視界を遮った。



「あっ…!」



未知がつまずいて前のめりになった瞬間…僕と未知の手が離れた。



「未知…!」



僕と未知は まるで津波に飲み込まれるように 人波に飲まれ お互いからどんどん離れていった。




手が離れた瞬間から…僕達はお互いを見失ってしまったのだった。