この世界で君を愛す

雲一つない快晴。


そんな青空の下で 渉の告別式は営まれた。


私の両親も来ていて 二人は私を支えるように寄り添ってくれた。


回りの声が耳に入ってくる。


『まだ若いのに可哀想に。事故ですって』


『なんでも…居眠り運転のトラックが大幅に車線をはみ出して…』


『明清大学の前に桜通りがあるでしょう。そこで…』


『ほら…あの人よ。婚約者の…。可哀想に』



何を聞いても 私は泣かなかった。

もう涙は枯れ果てていたし いろんな感覚や感情を無くしてしまったかのようだった。


私の目には何も映っていない。


お寺の桜の木から舞い散る花びらでさえ…白黒にしか見えなかった。



渉のいない世界なんて…私には何の魅力もないから。


渉がいないなら…何も見えないほうがいい。