拓也君は自分より大きいひまわりを見上げながら歩いて行く。

そして時々振り返るとニコッと笑った。

阿部さんが微笑み返すと嬉しそうにまた笑った。




ひまわりはみんな同じ方向に頭を向けている。


まるで太陽に恋をしているみたいに。


情熱的な夏の恋。

今の正木君みたいだな…。


夏だけで終わらないといいんだけどね。




そんな事を考えていると 拓也君が阿部さんの服の裾を引っ張った。

「ママー。僕 ひまわりのお花に触ってみたいよ。届かないんだもの」


「えっ?じゃあママが拓也を持ち上げてあげるから…」



阿部さんが言い終わらないうちに 拓也君の体はひょいと持ち上げられ 次の瞬間には正木君の肩の上にいた。


「どうだー?これで触れるだろ?」


「…うん」


とっさの事に驚いた拓也君は ほっぺたを赤くして戸惑っていたが 小さな手で花に触れると もじもじと言った。


「ありがとう…正木…お兄ちゃん」