『首の骨、そんなに見せて…痩せたなぁ。』
自分の声の大きさに鈍感な母が言う。父は背中で聞いていた。
思わず母の頬を、私は片手で挟んで、チューみたいな顔にした。
母が席を外した時に、父が
『あんなヤツ、来なくていい』と言ったのは黙っていた。
残した林檎の1つをつまみ食いして、母がトレーを戻しに行く。
食べている時からギュルギュル鳴っている父のお腹。
「はい、お腹鳴らしてる人はトイレ〜。」
椅子から腰を上げた父。
『あっ…』
ニコッと笑って
『出ちゃった…』
母に見付からない内に、片付けなくては。
全く不自然な光景だとはわかっていたけれど、父の後ろでバスタオルを広げて
トイレまで向かう。
幸い母は、トレーの返還場所にてこずっているのか、まだ戻って来ない。
父がトイレに篭っている間に、着替を持って来ようと思い立ち、病室に戻ると
母がいた。失敗。。。
何で着替を持ち歩いてるのか、何でここで着替えないのかと、聞いてくる。
私は「うん、うん」とだけ言って、トイレに向かう途中にナースステーションに寄って、父のお腹の事を伝える。
トイレは2つ。
「おとーちゃーん?」
『こっちー』
どっち?(笑)


