病室で待とうかと話していたけれど、どうにも暑い。
母も私も、暑いのは苦手だ。病院と言う場所は特に、独特の密閉感がある。
玄関ロビーのソファーが、一番涼しかった。お尻の落ち着き先を、そこに決めた。
本が読みたいと言う母に、貸し出し図書の中から見繕って渡し、私は院内探訪に出る。
こんな時でもなければ見ないであろう貼り紙や、小冊子を読んだ。
自分で持って来た本もあったけれど、病院の本は病院でしか読めない。
持ち帰るとゴミになるであろう小冊子の中から
【家族ががんになったとき】
これだけ、母に隠して自分のカバンに忍ばせた。
それにしても遅い。予定の時間は、もう過ぎていた。30分遅れで病棟に上がってみたけれど、まだ戻っていない。
いくら何でも、そろそろ終わるだろうと、母と二人、8階の面談コーナーに場所を移した。
ここならエレベーターフロアも見えるし、陽当たりもかげって来たので一石二鳥だ。
エレベーターが開く度に何度も振り返って確かめるけれど、
何度目かを過ぎた頃には、それすらしなくなっていた。


