「厠に行こうとして目を覚ましたら、声がしたものですから…」

「覗き見ていたのならばどうだろうと一緒だよ」

斎藤は血糊を拭って納刀する。

「それにしても…凄い技ですね…左片手一本刺突ですか…」

「……」

総司の言葉には耳を貸さず、斎藤は屯所の中へと入っていく。

「あの!」

総司は斎藤を呼び止めた。

「どうすれば…僕にもそんな凄い技が使えるようになりますかね…?」

…斎藤は振り向く。

「実戦で己の得意とする技を徹底的に磨き上げ、信頼のおける絶対の必殺技へと昇華させる事だ。そうすればその技一つで決着がつく」

「絶対の…必殺技…」

斎藤の言葉を何度も何度も反芻しながら、総司は胸の奥の血の滾りを抑えるのに精一杯だった。

いつか自分も斎藤や近藤、土方のような、新撰組の大戦(おおいくさ)では欠かせないと言われるほどの男になりたい…心からそう思った。