雨の季節の終わり頃。

雨上がりでまだ少し空気の湿っている田舎町に、彼、大月朔太郎はつい昨日引っ越してきたばかりである。

荷物の片付けを終えする事がなくなった為、町を散歩してみようと思い立ち、意気揚々と家から飛び出してきた。

何か面白いものでも見つからないだろうか。と好奇心いっぱいだった、が、見渡しても四方八方田んぼや畑や、時々民家で、地平線でも見えそうな程見えすいた平地が広がっている。

(生活するのにそんなに不便はないと思う、けど、これは流石につまらないような気がする。)

朔太郎は浪費癖もないし、三食食べて学校に通えるだけの環境があればいい。

これは祖母の家なので最低限保証されているが、何を楽しみにして生活したらいいんだろう。



しばらく勘を頼りに歩いていると、田んぼ道から畦道に変わった。

この辺りの地理はわからないが、とりあえずこんなところは通学にも遊びにも使わないのは何となく察しが付く。

引き換えそう、と踵を返そうとした彼はふと動きを止めた。


何かが聞こえる。

    ぴちゃん

水が落ちる音だ。

    ぴちゃん

でも、聞こえ方がおかしい。

    ぴちゃん

頭の中に、響くみたいな。










(―…なんだ、あれ?)





畦道のずっと遠くで、何か赤いものがちらちらと漂っているのが見える。

一瞬蝶か何かかと思ったがそれにしては赤すぎるし、明らかに何もないところから突然生じて数を増やしている。