「ユーゴ様だ!」

「ユーゴ様、クローディア様!!ヴァンパイアの王のご入場だ!!」

ざわめき始めたダンスホールの中央を縫うようにユーゴとその妻クローディアが入ってきた。

「『ヴァンパイア・キス』を彩るヴァンパイアたちよ。今宵はデュオとルシアの成人を存分に祝うがよい」

ユーゴが野性的な瞳を光らせてそう言うと、たちまちヴァンパイアたちの歓声が上がった。

ユーゴは満足げにその光景を見回し、ヴァイオラの前でその視線を止めた。

皮肉な微笑みを浮かべるユーゴの顔が黒光りするグランドピアノに映る。

「ヴァイオラ、デュオとルシアのために、一曲聴かせてくれまいか?」

ヴァイオラはユーゴを静かに見上げ、しとやかに微笑んだ。

「仰せの通りに。ユーゴ様。わたしはこの日を待ちわびておりました」

しんと静まり返ったヴァンパイア・キスに。

ヴァイオラの切なくも美しいピアノの調べが響き渡る。

やっと、ほんとうにやっとこの日がきた。

ルシアはずっと待ち焦がれていたその瞬間に胸を熱くした。

ヴァイオラのピアノで兄とワルツを踊る瞬間。

そして、愛しい兄とのキスの瞬間を………!





「ルシア、踊ろう」