ヴァイオラの部屋は彼らの部屋から10室ほどの部屋を超えたところにある。

ルシアが部屋を飛び出した瞬間、兄の姿はもう見えなくなっていた。

確かに漂うヴァイオラの血の匂い。

ルシアはその後を追うようにヴァイオラの部屋へと向かった。

ヴァイオラの部屋のドアを開けた瞬間。

ルシアは愛する兄のむせかえるほどの血の匂いに顔をしかめた。

「お兄様!?」

兄を呼んだ瞬間に瞳に入ってきた信じられない光景。

座り込みながらナイフを自分の胸に突き立てるように向けたヴァイオラと。

………そのナイフを片手をいっぱいに広げて受け止めている兄。

ナイフを受け止めたデュオの手のひらから、大量の血が滴り、床に流れる。

「……デュオ様、止めないでください。わたしは…もう生きてはいられないのです」

胸を打ち震わせながらデュオを信じられない表情で見つめるヴァイオラ。

デュオは流れる血を気にするそぶりもなくただバイオレットの瞳でヴァイオラを見つめていた。

ルシアは慌てて兄に駆け寄ると、兄の手に刺さっているナイフを抜き血に濡れた兄の手を握り締めた。

「お兄様、いったいどうなさったのです!?」

うなだれた様子のヴァイオラを見下ろしたまま、デュオが呟いた。



「ヴァンパイアが憎いか?ヴァイオラ…」