ヴァンパイアたちがワルツを踊り明かし、そろそろ眠りにつくという明け方。

ルシアとデュオもまた眠りにつくためにベッドに潜りこんだその時。

デュオはゆっくりと起き上ると、訝しげな表情でドアの外を見透かすように見つめた。

「お兄様?どうなさったのですか?」

ルシアが訊ねるや否や、デュオは立ち上がるとドアへ向かって歩き出した。

「…ルシアはここにいろ」

デュオはそのままドアを開け、廊下へと出ていく。

何かが起こったのだろうか?

ルシアは小首をかしげ起き上った。

その瞬間、よく知った甘い匂いが鼻をついた。

「…この匂いは…」

おかしい、と瞬時に思った。

この匂いは……ヴァイオラの血の匂いだ。

ヴァイオラはルシアとデュオ以外の者に血を与えることはないはずだった。

ヴァンパイアの王の子供に血を与える者は特別なのだ。

けして他のヴァンパイアに血を与えてはいけないという掟をヴァイオラが破ったというのだろうか…?

ルシアは兄の注意を無視し、部屋を飛び出した。