兄の体がさらに強く震える。

(いけない!お兄様を殺してしまう……!!)

ルシアははっと我に返り、牙を抜き、兄を見下ろした。

兄は悩ましげに吐息を吐きながら、ルシアを見つめていた。

物憂げに、妹を見つめる瞳。

7歳のルシアは、この世に生を受けて最も濃い官能を感じた。

「お兄様…キスがしたい」

血で濡れた自らの唇をゆっくりとその吐息の漏れる兄の唇に近付ける。

その時。

勢いをつけて開かれたドアに、我を忘れていたルシアの意識は現実に戻った。

「ルシア様!!いけません……!デュオ様のキスはまだ幼いルシア様には、耐えられるエクスタシーではありません!!」

叫び声を上げながら入ってきたヴァイオラをぼんやりと見つめながら、ルシアは思い出していた。

(そうだった…。お兄様のエクスタシーはヴァンパイアの中でも特別に強いもの。幼いわたくしがキスをしようものなら、たちまち廃人になってしまう…!)

デュオは「…う…ふぅ…!」と息を吐くと、ルシアの唇についた自分の血を指で取り、その甘美な舌で舐めとった。

「ルシア、焦るな。私たちの命は、永遠なんだ」


ルシアはこの日。

双子として生まれた兄を強く愛していることを知った。



その孤独な心の奥深くで……。