恋文~指輪が紡ぐ物語~


「いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ」

 カウンターにいた男性にそう言われ、ふたりは窓際の一番奥の席に着いた。
 出窓には可愛らしい動物のオブジェが並べられている。

「いらっしゃいませ」

 カウンターにいた男性よりも若いと思われる男性が水とおしぼりを持ってきた。

「どうぞ。うちのおすすめはパンケーキ。絶品だよ」

 笑顔ですすめられたパンケーキは、確かにメニューを見ていても美味しそうだ。

「お決まりになりましたら、お呼びください」

 店員がカウンターの奥へ入って行ったのを確認すると志穂はぽつりと呟いた。

「……馴れ馴れしい」

 花乃も思ってしまったが、あえて口にしなかったのに。
 確かに第一印象は、よく言えば人懐こくて、悪く言うならば馴れ馴れしい。

「しーちゃん……、仕事柄かもよ。でも、しーちゃんのタイプでしょ?」

「な、違うよ。なに言ってんの?」

 しっかりしててなんでもソツなくこなす志穂だが、恋愛関係は苦手らしい。花乃も志穂から好きな人の話は聞いた事がない。でも、なんとなく志穂の好きなタイプはわかる。

「だって、ちょっと政宗先輩に似てない?」

「似てないっ! てか、なんでそこで部長がでてくるの?」

 珍しく志穂の頬が赤くなっている。やはり、恋愛関係の話は苦手なのだ。
 花乃が気付くくらいだから、きっと榊もわかっているんじゃないかと邪推してしまう。

「私が思うに、しーちゃんの好きなタイプは……」

「それよりも、さっさと頼むもの決めよ」

 話をあっさりと打ち切った志穂は、少し赤い頬のままメニューとにらめっこを始めた。

 花乃がこっそりと、可愛いしーちゃんが見れたと喜んでいたのはもちろん志穂には内緒だ。