恋文~指輪が紡ぐ物語~


 雲ひとつない青く澄んだ空を背景にして、振り向いた松岡の言葉。

――コウスケジャ、ナイ?

 花乃は、すべてが止まったような衝撃を受けた。

 校庭から聞こえていた運動部の声。下校していく生徒たちの楽しげなおしゃべり。すべての音が、一瞬で消えた。

 そして、花乃自身もぴたりと動きを止めて頭の中が真っ白になっていた。


「…ちがう、の?」

 言葉にした瞬間、ドクン、と大きく心臓がなった。

 やっとのことで動き出した頭は、それでも回転は遅い。

 言いたいこと、聞きたいことはたくさんあるのに、うまく形になってくれない。


 昨日、母親から彼の話を聞いてから、ずっと松岡が浩介だと思っていた。それが自然なことだと。

 だって、松岡は、花乃が浩介に渡した指輪を知っていたはずだ。
 ずっと、一緒に指輪を持っていた人を探してくれていたけど、本当は松岡が持っていたんだって思ってた。

 だけど、違うの?
 松岡は浩介じゃない?
 じゃあ、なんで、あの指輪を持っていたの?

 次から次へとわきあがってくる疑問。

 うまく言葉が出てこないことが、ひどくもどかしい。

「……あなたは、誰?」