恋文~指輪が紡ぐ物語~


 またしても、花乃がひとりで頭を悩ませていると、いつの間にか花乃の前の席に座っていた志穂の呆れた声が聞こえた。

「花乃さ、おばさんに聞けば早いじゃん」

 そう、それが一番手っ取り早い。花乃もそれは分かっている。
 だけど、何かが花乃にストップをかけている。
 母親に聞けばきっとすぐに分かる。
 でも、それはしたくない。

 その考えが花乃の頭をよぎると、なぜか松岡の哀しそうな瞳が思い出される。

 その瞳が何かを訴えているようで、花乃にストップをかけている。



 そんな花乃を見ていられない志穂は、ずっと悩んでいた事を実行する決意をした。

 花乃に気付かれたら必ず嫌な顔をされる。それを分かった上での決断。

 いつまでも悩んでいる花乃を見ていたくない。