* * *
ざわつく朝の教室。
そこここに小さな固まりができている。
いつもなら、花乃もどこかの固まりに混じっておしゃべりに花を咲かせている。
しかし今日は、挨拶もそこそこに自分の席へ着いた。
そして、げた箱に入っていた封筒を開ける。
すでに見慣れた文字が並んでいる。
『花乃ちゃんへ
本当に覚えていないんだね?
でも、君に思い出してほしい。
だから、ヒントをあげる。
僕と君が初めて会ったのは、本当に小さい頃で、よく君は僕の後ろをくっついて歩いてた。
僕のこと、名前、早く思い出して。
』
ーーなんで、思い出せないの?
胸が痛い。苦しい。
苛立ちと焦りがないまぜになって、花乃の心に迫ってくる。
ーー小さい頃って、いつ?
「…乃、花乃っ」
突然、志穂の声が聞こえてきて、花乃の思考は中断された。
花乃の席の前に立つ志穂を見上げると、彼女は心配気な表情を浮かべていた。

