恋文~指輪が紡ぐ物語~


 学校からの帰り道。花乃は、志穂に図書室での出来事を話した。

「松岡くんのあの目。絶対にどこかで見たことあるの。寂しそうで悲しげな、だけどまっすぐな目。絶対に悪い人じゃないよ」

 初対面の人間をここまで言う花乃は初めてだ。

 志穂はこっそりとため息をついた。
 花乃は大人しいが、意志は強い。志穂が何を言ったところで、無駄だろう。指輪を持っていた人物を探そうとする。

「…わかった。指輪を持っていた人探し、協力してあげたいところなんだけど…生徒総会の準備があるから」

「大丈夫だよ。しーちゃんは、生徒会のお仕事がんばって」

 花乃はふわりと微笑んで、指輪を目の高さに掲げた。

「きっと、大切なことを忘れてる。思い出さなきゃいけないの」


 小さな指輪は夕陽に照らされて、オレンジに輝いた。