「会ってどうするの?」
まっすぐに投げかけられた疑問。
目がそらせない。
一瞬、逡巡した花乃だったが、彼の目を見てはっきりと告げた。
「話がしたいの。知りたいの、なんでその人がこれを持っていたか。知らなきゃいけない気がするの」
松岡の目が僅かに細くなり、花乃に微笑んだ。花乃が初めて見る彼の心からの優しい表情。
「どうするの?」
松岡の質問にきょとんとした花乃は、首を傾げた。
「…どうしよう?」
脱力した松岡が、声を出そうとした瞬間、
ーーガラッ
勢いよく図書室の扉が開いた。
「やっぱり、いた」
扉を開け放ち、肩で息をしながら呟く志穂に驚き、花乃は目を見張った。
そんな花乃とは対照的に、松岡はのんびりと言う。
「お迎えが来たみたいだから、俺は帰るよ」
彼は言葉通り、机の上に広がっていた教科書や筆記用具をバッグにしまっていく。
そして、席を立つと「じゃあね、花乃ちゃん」と手を振り、志穂の脇を通り過ぎようとした瞬間に響く鋭い声。

