椅子に座り、木製の器に入ったカレーを覗き込む。


うん、見た目は70点ぐらいかな。


でも君は、僕がカレーにうるさいて知ってて何でカレーを出したんだろう。


考えるよりも先に、食べてみよう。

木製のスプーンで、白い湯気を立てるカレーを、一口分すくい上げる。

僕の嗅覚は、食欲をそそられる匂いで溢れ返った。


パクッ


お・・・・・!


うまいかも。

君が料理が得意だって事は、もちろん知っていた。

でも、こんなに僕の好みにピッタリのカレー初めてだ。

きっと君は天才に違いない。

たとえ僕の好みを知っていたとしても、こんなに完璧なものは作れるはずがない。


しかし、このカレーは、野菜の柔らかさやスパイスの感じが、もうもろに僕のストライクゾーンだった。


うまい、うますぎる。

スプーンの動きが止まらない。

こんな完璧(ちょっとわがままなとこもあるけど)な女の子が、こんなどこにでもいるような一般人代表の僕の事を好きになるなんてある意味奇跡に近い。


「なぁ、順子」

ふと、手を止めて聞いた。

「なに?」

君は、スプーンを置いて僕を見る。


「あのさ、」


僕のどこが好き?

なんて、こっ恥ずかしいこと聞けるはずもなくて、黙った。


「はは、なぁに?どうしたの?太郎」

君は頬杖をついて、俯く僕の顔を見る。


「あのさ・・・うまいよ、カレー」

作り笑いで、もう一口カレーを頬張った。