君と僕<短編>




すると、マスターが、にこにこしながら何かを運んできた。


それは、

白い湯気を立てた焼きたてのアップルパイだった。



「あたしの、プレゼントその1」


「えー・・・!これが?」


僕は仕方なく、ナイフとフォークでアップルパイを切った。


パクッ


あれ?


「どう?」

君は、身を乗り出して聞く。


「美味しいじゃん!」



「やったぁ!」

その言葉に、マスターと君は大喜び。


僕は結局、全部一人で食べた。


「それじゃあ、そろそろ帰るね!」

君はマスターに手を降って、僕を無理矢理店の外まで引きずった。


車に乗り、僕は気になっていた事を聞いた。


「プレゼントその2は?」


「へへっ!そんな急かさないで」


君は、少し引き攣った笑顔を見せた。


その後、


「・・・結婚しようよ」

といって、笑った。


君の右手の薬指には、小さい宝石がついた指輪がはめられていた。


嬉しかった。

こんな幸せでいいんだって思うくらい。



騙されといてこんな事言うのもあれだけど、病院で、僕がプロポーズした時、君の目から涙が零れたんだ。


やっぱり、君は嘘をつくのが下手だよ。


晴れ渡る空の下、僕はまた車を走らせる。


これから、何回、関に行くことになるんだろうな・・・


きっと、今となんら変わらない未来に、期待が膨らんだ。



おわり