カフェ関

これが、このカフェの名前だ。

関は、マスターの名前から来ている。

一階は普通のカフェで、二階は麻雀店だ。

そのため年齢問わず、様々な世代が出入りしていた。


君はコーヒーを啜りながら、いつも持ち歩いている絵本を開いた。


俺は、ヘッドフォンをした。


タバコに火をつけ、深い空想にのめり込む。

何でだろう

来る前は、嫌だって思うのに来てしまうと癒されるのは。


もういっそ、この店の近くに住もうか。


それにしても、何故君は毎週のようにこの店に来るのに飽きることがないんだろう。


アップルパイが、あまりに美味いからだろうか。

コーヒーが、何度も飲みたくなるくらい絶品なのだろうか。


どちらもなんか、違うような気がした。


「アップルパイです」

緩い店員が、緩い声で、なんか緩い感じでテーブルにアップルパイを乗せる。


途端に、甘い匂いが体全体を駆け巡った。


ほのかに湯気を上げる焼きたてのアップルパイの上に、アイスが乗せられ、微かに溶けたアイスと柔らかい林檎が混ざり合って何だか芸術的だった。


「食べる?」

君は、アップルパイをナイフで一口分にカットしながら聞いた。

僕は甘い物が苦手だから、静かに首を振った。

すると君は、がっかりしたような顔でアップルパイを一口食べた。

毎回、こんなやりとりがある。


そんなわけで俺は、一度もこの店のアップルパイを食べたことがない。