君は小洒落たカフェがすきだ。


「順子、またカフェ行くのか?」

って僕が言うと、

「うん!今日、いい天気だからさ」

と言って、車の鍵を手渡した。


僕は正直嫌々だった。

わざわざ隣街にあるカフェまで行くのは面倒臭い。

それも、休みの度にだ。

君は、「いい天気だから」って言うけど、この間は豪雨だったのに無理矢理車に乗せられた。



エンジンをかけて、車を走らせる。


「順子、そろそろ車の免許取れば?」


「太郎が運転してくれるんでしょう?」


順子は、こっちには目もくれずに言った。


ワガママだけど、何故か愛おしかった。



「着いたよ」


車をいつもの駐車場に停める。


君は、嬉しそうに車から降り、スキップ混じりで店に入った。


腐るほど見てきたこの店の店内、本当に変わり映えしない。


若く、無口なマスターと、ダラダラと空の皿を片付ける店員。

本当に緩く、入った瞬間、思わずあくびが出た。


君に手を引かれ、僕はよろける。

君はこの店に来ると、いっつもこの調子でテンションが上がる。


僕といても、面白くないのだろうか。


いつもの席に腰を下ろし、君はコーヒーとアップルパイを注文した。


僕は金がない。

理由は、しがないミュージシャンだからだ。

いつもヘッドフォンを首に下げ、パーカーにジーンズというお決まりのスタイルで活動中。

でもまだ、金を貰えるほど大きくなってはない。

アコースティックギター片手に曲作りの毎日だ。


たまに、君は僕のどこに惹かれたのか分からなくなる。

でも、傍にいれるだけで幸せ。