愛しいひと







横になり瞳を閉じて既に寝息をたてはじめた空を少しの間眺めてから、葵もベンチに横たわった。


真っ直ぐ見上げる空は眩しくて。

真上にある太陽のせいで瞳を閉じても淡いオレンジ色の光が入ってきて。


これじゃ寝れない、と思った葵は
ベンチの背もたれとは反対側の・・・つまり、空の寝ているベンチの方へ体を向け、再び瞳を閉じた。


昨夜ゆっくり眠れなかった。

別に、緊張してたとか不安があったとかではない。

まだ少しだけ不安定なだけ・・・

暖かくて心地よい日だまりのせいで、先程までの睡魔が襲いかかってきた。

葵は耐えられずにすぐに意識を手放した。



顔の上に腕を被せて寝ていた空が、そんな葵を横目で見て、「どっかで、見たことある気が・・・するような・・・どこだったっけなあ・・・」と呟いたのを知る人は誰もいない。


此方に顔を向けて無防備に寝る葵を見て、自然と笑みが零れ空も意識を手放した。




これが、『桜木空』との出逢いだった。






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