愛しいひと







教師に言われた通りに進む。

階段とトイレをほぼ同時に見つけたが、葵は迷いもせず階段をのぼっていった。

ここは3階なので屋上までは2階ぶんのぼるだけだった。

鍵がかかっていないか少し心配していたけど、その必要はなかったようだ。


ドアノブに手をかけ、右側にひねる。
少し重みのあるドアを体で開けた。


開けたドアからは冷たい空気が流れ込んできた。

寒さに軽く震えたが、すぐになれた。

太陽の下にでると心地いい気温だった。


葵は両手を空に向け、大きく伸びをした。


「んーっ!やっぱり屋上はいい」


手すりで体を支え身を乗り出す。

屋上からは中庭が見えた。

大きな木が一本中心にあり、まわりの花壇には花が植えられていた。


生ぬるい風が通り抜ける。


「寝よっと」


屋上の中央にあるふたつのベンチへ体を向けた。






_