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頭痛がする頭を押さえながら校門に立ち、生徒達と挨拶を交わす。


その群の中に、佐山を見付けた。

スッと背筋を伸ばして歩くその姿に、立っているのがやっとな自分が恥ずかしい。


久しぶりにブースに入り、年甲斐もなく暴れまくったあと、飲んだくれてこのザマだ。


…気持ち悪ぃ


こんなになるまで飲んだのは久しぶりだ。

シンのペースに合わせてたからな…



「佐山、おはよう」



「おはようございます」




いつもと変わらない挨拶をして、笑顔を向けてくれた佐山


「…二日酔いですか?」


「っ…もしかして…酒臭い?」


「図星だ」



周りを気にしながら背伸びをした佐山の手が、俺の髪に触れた。


近付いた距離に昨日の出来事が過る



「…髪…跳ねてますよ」

「…っ…」



意識しなくても、佐山の唇に目が行ってしまう。



「…先生はもう、忘れているかもしれないけど…、昨日はごめんなさい」



忘れるって…そんなわけないだろ

そもそもこんなに頭が痛いのも、こんなに目のやり場に困るのも、昨日のキスが尾を引いているのは明らかで


「佐山…」


何を言おうとしたのか自分でもわからない


かける言葉を選んでしまうのは、俺が教師だからなのか、佐山に対する気持ちを抑えようとしているからなのか


…その両方だ


クラスメイトと挨拶を交わす佐山を見ながら、考えないようにしていた気持ちが確信に変わって行くのを感じた。