私の上に乗っていた田中っていう男の体が飛ぶ。
「でさ、オマエ等、誰に手出してんのかわかってんの?」
冷たい声のあと、ボグッ、と何かを殴った音。
私は驚いて身動きができない。
早坂爽、だよね。
なんで?
首だけそっちに向けると、男を足蹴にしていた。
「それ、俺の大事なお嬢様なんだよね」
お腹を踏みつける。
男が「ひっ…」と声を絞り出した。
「ま、覚悟できてんだよなぁ……そちらのお嬢様がたも、わかってる?」
呼ばれたお姉様たちの顔が青ざめていく。
にこ、と笑う顔が、より恐ろしい。
「俺、女でも手加減しないよ?」
話しながらも、足は止まらず。
人が痛めつけられる音が響く。
………痛そう。
私は早坂爽に言った。
「もう、いいよ」
音がやんだ。


