「……そん時、爽、なんて言うてた?」
「え……」
――早坂爽じゃない。
って、言ってたよね。
「俺は早坂爽じゃない、みたいなこと、言ってた」
すると、櫂が笑い始めた。
爆笑。
「な、ブッ…!!アイツ…かわえぇな!!乙女かい!!」
……???
かわいい?
乙女?
誰が?
早坂爽?
…………????
―――――――。
「あー…笑えたわー。しんどい」
ひとしきり笑った後、櫂が「愛ちゃん」と呼んだ。
「俺は誰でしょーか?」
自分を指差す。
「……櫂?」
「正解ー。じゃあ、愛ちゃんの執事は?」
「………早坂爽」
「それや、それ」
今度は私を指差す。
「…何が?」
「爽が怒っとる理由」
…………え?
櫂は櫂。
早坂爽は早坂爽。
合ってるよ、ね?
「ちょっとそれどういう…って、あッ!!!?」
気づいたら、櫂の姿はもう遠く。
「自分で考えなあかんでーっ」
……そんなこと言われたって、わかりません。


