空は晴れていて、泣いている私を笑っているようだった。
別に行くところもなく、寮のまわりをゆっくり歩く。
こうしてると、なんか、思い出すなぁ。
「………ここに初めて来たときは、大きくて驚いたんだけど」
今や見慣れた建物だ。
「爽が連れてきてくれて………」
執事なんて言われて混乱してた私を、笑顔で誘って。
「……俺様で、びっくりした」
あの時の、冷たい声は忘れられないな。
「……………キスも、されて……」
私のはじめてのキス。
そういえば、爽だったな。
「……………爽」
ここではいろんな思い出があって。
そのすべてに、爽がいて。
………私の頭のなかは、爽ばかりだ。
笑いがこぼれて、同時に目頭が熱くなる。
涙がこぼれるのは、必死にこらえた。
悲しいからって、泣くのはやめた。


