「お嬢様とですか……?」
「……うん……」
ああ、やっぱり聞かなきゃよかった。
爽、困った顔してる。
「……まあ…悪くはないかと……」
私に気をつかって、歯切れの悪い返答してるのかな。
弾まない会話。
もうこうなったら、ぜんぶ、聞いちゃいたい。
「………ねえ」
「はい?」
完璧な、営業用のスマイル。
もうあの意地悪な笑みは、見せてくれないのかな。
「愛」って呼んでくれないのかな。
…………アメリカ、行っちゃうの?
―――ぷつん。
突然、何かが崩れたみたいに、涙があふれた。
それは、ぼろぼろと垂れて、スカートを濡らして。
目の前の爽は、すぐに涙で見えなくなった。


