「あたしが執事になってって頼んだら」 目の前で、美羽さんのピンクの唇が動く。 「爽、いいよって言ってくれたんだ!」 ――私は、教室を飛び出した。 走りながら、考える。 嘘。 そんなはず、ない。 『ほんもの』が帰ってきたから、私はもう、いらないってこと? そんなの、嫌。 嫌だよ。 「爽……っ」 いかないで。